本業とその他の事情によりお休みしていた。既に古い話になってしまったが、コンピュータ将棋協会blog 内で興味深いご提案を拝見したのでここで紹介し、謎電の作者の感じたところを書いておこうと思う。


引用元:十八世 “人間” 名人


> 人間vsコンピュータでは、コンピュータに消費電力制限を課す、というのも、環境の世紀の対決の一案かもしれません。


CSAの総意ではなく一理事としてのご提案であろうと思う。この件は私の仕事に非常に関係した事柄で、個人として賛同したいところである。仕事上、地球環境への負荷を減らすことが一番の理由だが、それ以前に時の竜王・名人と平手で戦える日が来た時、相手より遥かにエネルギを使って勝ったところで、それでは勝ったうちに入らないと思えるからだ、人間とクルマが100mダッシュで競っても意味がないように。そこで人間対計算機の試合がフェアと言えそうな計算機側消費電力制限案を一つ出そうと思う。


先ず、人間の消費電力を計算してみる。人間が生きていく為に必要なエネルギは、栄養学でいう生理的熱量(単位[Cal])を用いて計算するが、これは簡単に電力量に換算出来る。具体的には1[Cal]=約1.136[Wh]となっている。人間側が3,000[Cal]を1日で消費するなら、フェアだと言える計算機側の1日分の消費電力量は3,408[Wh]となる。この電力量を24時間で均等に使うとするなら、平均消費電力は142[W]となる。もう少し正確に書くなら、そのエネルギの内、脳で使われているのは約1/3なので、真にフェアだと言えるプロセッサの消費電力は高々50[W]程度となる[*1](人間は寝ている時に省電力スリープモードに入るが、ここでは「平均」という意味で)。


「(2日制で)人間が寝ている時は電源を切る」みたいな話がどこかにあったような気はするが、それはちょっと無謀なので「総消費電力量しばり」が妥当かと思う。ここでは(プロセッサのみで)50[W]としたが、正直これは現行入手出来るプロセッサの性能では非常に厳しい条件だ。しかしながら5~10年先を見据えた世紀の対決で、人間側が納得できる最低限満たすべき(もしくは技術屋が達成すべき)条件ではないかと考える謎電の作者である。


[*1] その程度の熱量で抑えないと、人間の脳内ではたんぱく質が変質し細胞が死んでしまう。余談だが十年程前、羽生は史上最強の棋士か否か、が議論になったことがある。勿論「大山より強いか否か」という意味だが、その議論は「羽生は、扇子+寝癖ヒートシンクという画期的な冷却システムでその頭脳を冷していたが、大山は扇子はあってもヒートシンクがついてないので史上最強は羽生の筈である」という結論に達し、ほぼ万人が納得していた。←コレが今回のオチである(汗)